久しく鳴りを潜めていた怪盗が、最愛の伴侶を右腕にして復活する日が来た。意気揚々と金満家の邸宅に乗り込んだが、相次ぐ番狂わせに進退窮まり……表題作など12編。
解体されナンバリングされた挙句、消え去った3人の死体。不審な人影の追跡劇と、密室からの人間消失。配達された小指。コンクリートに残された足跡――名探偵・蜘蛛手が……
幻のアイドル探しに駆り出された制作会社(プロダクション)社員・藤岡真の、狂騒の夏がいま始まる。第十回小説新潮新人賞を受賞した鬼才による、ブラックなユーモアと仕掛けに満ちた第一長編。
京葉道路に倒れていた女を利用して一儲け企んだ男たち。警察と素人探偵を巻き込み二転三転する誘拐作戦の行方は? 語り手捜しに始まる趣向に満ちたトリッキイな本格ミステリ。
絵画を眺めてから眠りに就くと、その絵の中に入り込んでしまう……楯経介の不思議な体験が、夢幻的な犯罪の世界へと読者を誘う!? 鮎川哲也賞作家、渾身の書下し長編。
憑かれたように描き続け、やがて自殺を遂げた画家。彼が遺した二枚の絵に込められた主題(メッセージ)とは? 図像学とミステリの幸福な邂逅により生み出された、第九回鮎川哲也賞受賞作。
わたしが結婚し、そしてこの手で殺した男は、背が高くて東大出だった――理想と見えた結婚生活の破綻を語る衝撃の手記「背が高くて東大出」など10編。
【第6回鮎川哲也賞佳作】8年前に自殺した従姉が住んでいたアパートに越した姉弟が、天井裏で古びた人形を見つけた。人形が秘めていた告発とも読めるメッセージを追って過去への旅を始めた姉弟は……。
自己破壊衝動に苛まれる男の物語「落ちる」、万年平行員のささやかな逆襲「ある脅迫」、完全犯罪かと思われた事件の皮肉な露顕「笑う男」――第40回直木賞を受けた3編など、多彩な趣向に満ちた初期秀作10編を収める。……
「ビゼーよ、帰れ シューマンは待つ」謎めいた新聞広告の背後に、美貌の人妻の失踪事件が絡んでいた。赤の連鎖が導く真相とは?(『赤の組曲』)。製菓会社社長の娘が誘拐され、身代金を持参した母親が刑事の目の前で刺殺される。……
弁護士事務所に出向した探偵社の社員が勝ち味の薄い難件に直面、やたら不利な情況証拠と人手不足の上に手弁当を強いられ、果ては女難にあえぎつつ東奔西走する中編「雲の中の証人」など9編。
半ば厭世観に囚われた篠原喬一郎は、三度命を狙われたとき甘んじて殺されてやろうとさえ思う。しかしその相手だけは知っておきたいと、犯人候補者六人の許へ。狸親父が贖罪の巡礼を行う『人でなしの遍歴』……
優雅なドレスに身を包み、綺麗な靴を履いて観客席に現れるおっとりした女性・虹森多佳子。超弩級の野球音痴でありながら、なぜかプロ野球球団のオーナーを務める彼女は、奇妙な謎を次々と解決に導く!
浪速大学ミステリ研究会の一員となった吉野桜子は、大叔父の遺言捜しを三人の先輩に依頼する。ミステリ好きだった大叔父は、マニアが喜びそうなことをしているはず……
ある男の殺害期成同盟を結んだ4名の目論見と決行の実際を描く「われら殺人者」、最後の一行へ見事に収斂する緊迫感に満ちた佳品「崖下の家」など11編。
江戸川乱歩の「一人の芭蕉の問題」を読んで感動した著者が、「文学精神と謎の面白さの全き合一を求めよう」と、推理小説の創作に取り組んだ最初期の二長編……
氷柱と綽名される男が、ある日遭遇した少女の轢き逃げ事件を契機に、情熱の赴くまま犯罪行為に手を染めていく。曠古の探偵小説『氷柱』と、入院中の元刑事が見舞客の話を聞いてベッド・ディテクティヴを務める『おやじに捧げる葬送曲』を併せ収める。……
カクテルリストの充実した小粋な店〈エッグ・スタンド〉の常連は、不思議な話を持ち込む若いカップルや何でもお見通しといった風の紳士など個性派揃い。そこで披露される謎物語と人生模様。キュートなミステリ連作集。
探偵小説の巨匠・天城俊策の一家を巡る、恋と計略と悲痛な死の謎。隻腕の青年刑事・五百村は敢然と謎に立ち向かう。戦前の名古屋を舞台に、天災人災に翻弄されながらも必死に生きる青年……
「深夜の獣魂病者」から「消しゴムお蝶」まで、二十世紀と共に生きた推理文壇の最長老渡辺啓助の全業績から選び抜いた十九編。……