会社帰りの電車で思いも寄らない再会を果たした二人が織り成す、少々雲行きの怪しい友情――腐れ縁の行方を軽快な筆致で描く「親友記」や、完全無欠の誘拐実践を題目に一席ぶつ「犯罪講師」など、最初期の9編を収める。解説=日下三蔵
「親友記」
「塔の家の三人の女」
「なんとなんと」
「犯罪講師」
「鷹と鳶」
「夫婦悪日」
「穴物語」
「声は死と共に」
「誓いの週末」
天藤真
(テンドウシン )東京生まれ(1915‐83)。東京帝国大学国文科卒業。同盟通信記者を経て、戦後は農業に従事し、その傍ら千葉敬愛短期大学で教鞭を執った。62年「親友記」が第3回宝石賞に佳作入選。同年『陽気な容疑者たち』が第8回江戸川乱歩賞の最終候補となり、大下宇陀児の推輓を得て翌年刊行に至る。79年『大誘拐』で第32回日本推理作家協会賞を受賞。著書に『遠きに目ありて』『死の内幕』『鈍い球音』『皆殺しパーティ』『殺しへの招待』『炎の背景』『死角に消えた殺人者』『善人たちの夜』『わが師はサタン』『親友記』『星を拾う男たち』『われら殺人者』『雲の中の証人』『背が高くて東大出』『犯罪は二人で』等。