銀座の街頭で奇禍に遭ったところを救われ、連日の不穏な出来事を訴える可憐な女性、笹本芳枝。人妻と知りつつも探偵作家大江の胸は騒ぐ。その翌日、緑衣の凶賊が笹本家を襲って……。一月後、夫を喪い伊豆で傷心を癒す芳枝から便りが届く。募る想いに矢も盾もたまらず赴いた大江の前に、またも立ちはだかる緑の影。挿絵=嶺田弘・伊東顕
江戸川乱歩
(エドガワランポ )1894年生、1965年歿。大正12年の〈新青年〉誌に掲載された「二銭銅貨」がデビュー作。それはまた、わが国で初めて創作の名に値する作品の誕生であった。以降、「パノラマ島奇談」等の傑作を相次ぎ発表、『蜘蛛男』以下の通俗長編で一般読者の、『怪人二十面相』に始まる年少物で少年読者の圧倒的な支持を集めた。推理小説の研究紹介や、新人作家育成にも尽力した巨人である。