乱歩の前に乱歩なく、乱歩の後に乱歩なし
江戸川乱歩ワールドへの御招待〈創元推理文庫版〉

 『日本探偵小説全集2 江戸川乱歩集』

 大乱歩の歩みは、そのまま日本探偵小説の歩みであった。大正12年、〈新青年〉にデビュー作「二銭銅貨」を発表して以来、紡ぎ出された幻想の糸は絶えず読者をとらえて離さない。そして彼の変身願望、地底願望は「屋根裏の散歩者」以下の作品中に、ある時は戦慄と共に、ある時はこの世のものならぬ甘美さと共に見出すことができよう。本集は巨星の足跡を一望のもとに収める、精華と呼ぶに相応しい一巻である。
 収録作品/二銭銅貨,心理試験,屋根裏の散歩者,人間椅子,鏡地獄,パノラマ島奇談,陰獣,芋虫,押絵と旅する男,目羅博士,化人幻戯,堀越捜査一課長殿
(桃源社版『江戸川乱歩全集』に依り、初出誌等に当たって校訂を重ねた上、『陰獣』に竹中栄太郎氏の挿絵を復刻。)

 *乱歩傑作選

(桃源社版に依り、初出誌等に当たって校訂。初出掲載時の挿絵全点を附し、往時の感興をそのままにお楽しみいただけるシリーズです。)
(1) 『孤島の鬼』
密室下で恋人を殺された私は真相を追って南紀の島へ


(2) 『D坂の殺人事件』
二癈人,赤い部屋,火星の運河,石榴など十編を収録

(3) 『蜘蛛男』
常軌を逸する〈青髯〉殺人犯と闘う犯罪学者畔柳博士


(4) 『魔術師』
生死と愛を賭けた、名探偵と怪人の鬼気迫る一騎討ち

(5) 『黒蜥蜴』
一世を震撼せしめた稀代の女賊と名探偵の宿命的な恋


(6) 『吸血鬼』
明智と美人助手文代、小林少年が姿なき吸血鬼に挑む

(7) 『黄金仮面』
怪盗A・Lに恋した不二子嬢。名探偵の奪還なるか?


(8) 『妖虫』
読唇術で知り得た明晩の殺人。探偵好きの大学生は……

(9) 『湖畔亭事件』(同時収録/一寸法師)
A湖畔の怪事件――湖水に沈んだ真相を吐露する手記


(10) 『影男』
我が世の春を謳歌する影男に、一転危急存亡の秋が!

(11) 『算盤が恋を語る話』
一枚の切符,双生児,黒手組,幽霊など10編を収める


(12) 『人でなしの恋』
再三にわたり映像化、劇化されている表題作など10編

(13) 『大暗室』
正義の志士と悪の権化が骨肉相食む深讐綿綿の決闘記


(14) 『盲獣』(同時収録/地獄風景)
気の向くままに悪逆無道を極める盲獣は何処へ行く?

(15) 『何者』(同時収録/暗黒星)
乱歩作品中、一と言って二と下がらぬ本格趣味の秀作


(16) 『緑衣の鬼』
恋に身を焼く素人探偵大江の前に立ちはだかる緑の影

(17) 『三角館の恐怖』
癒やされぬ心の渇きゆえに屈折した、哀しい愛の物語


(18) 『幽霊塔』
埋蔵金伝説の西洋館と妖かしの美女をめぐる謎また謎

(19) 『人間豹』
名探偵明智小五郎の身辺に迫る牙。文代さん危うし!


(20) 『悪魔の紋章』
悪魔の証、三重渦状指紋に脅かされる川手家の命運は

以下続刊
(2003年7月15日)
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