●北山猛邦氏推薦――「教典と読んでも過言ではない、とっておきのエンターテイメント小説」
初秋の温泉宿で、美貌の女性、柳倭文子を間に挟み、世にも奇妙な決闘が執り行われようとしていた。やがて舞台を東京に移すや、彼女をつけ狙う不気味な唇のない男が出現し、怪事件が続出する。明智と『魔術師』事件で知り合った美人助手文代、それに小林少年が加わり、怪人を向こうに回した死闘の幕が切って落とされる! 挿絵=岩田専太郎
江戸川乱歩
(エドガワランポ )1894年生、1965年歿。大正12年の〈新青年〉誌に掲載された「二銭銅貨」がデビュー作。それはまた、わが国で初めて創作の名に値する作品の誕生であった。以降、「パノラマ島奇談」等の傑作を相次ぎ発表、『蜘蛛男』以下の通俗長編で一般読者の、『怪人二十面相』に始まる年少物で少年読者の圧倒的な支持を集めた。推理小説の研究紹介や、新人作家育成にも尽力した巨人である。