過ぐる明治末、客船宮古丸が難破した折、辛くも長らえた一行があった。陸影を認めるや有明男爵とその家令に牙を剥いた大曾根は単身生還し、まんまと男爵の妻と財産を手中に。それから20数年の後、義兄弟に当たる男爵の息子と大曾根の息子は運命の出逢いをする。正邪黒白の両陣営に分かれ、血で血を洗う死闘が始まった! 挿絵=田代光
江戸川乱歩
(エドガワランポ )1894年生、1965年歿。大正12年の〈新青年〉誌に掲載された「二銭銅貨」がデビュー作。それはまた、わが国で初めて創作の名に値する作品の誕生であった。以降、「パノラマ島奇談」等の傑作を相次ぎ発表、『蜘蛛男』以下の通俗長編で一般読者の、『怪人二十面相』に始まる年少物で少年読者の圧倒的な支持を集めた。推理小説の研究紹介や、新人作家育成にも尽力した巨人である。