日本の推理小説の礎を築き上げたのが江戸川乱歩であるのは異論のないところだろう。その巨人の短編小説の粋を収めたのが本巻である。デビュー間もない時期に発表された「二癈人」を筆頭に、ご存じ明智小五郎が初めて登場した記念すべき「D坂の殺人事件」から、戦後の名品「防空壕」に至る全10編を、初出誌の挿絵を付してお届けする。
「二廢人」
「D坂の殺人事件」
「赤い部屋」
「白昼夢」
「毒草」
「火星の運河」
「お勢登場」
「虫」
「石榴」
「防空壕」
江戸川乱歩
(エドガワランポ )1894年生、1965年歿。大正12年の〈新青年〉誌に掲載された「二銭銅貨」がデビュー作。それはまた、わが国で初めて創作の名に値する作品の誕生であった。以降、「パノラマ島奇談」等の傑作を相次ぎ発表、『蜘蛛男』以下の通俗長編で一般読者の、『怪人二十面相』に始まる年少物で少年読者の圧倒的な支持を集めた。推理小説の研究紹介や、新人作家育成にも尽力した巨人である。