のんびり楽しめる脱力系ミステリ、ささやかに始動!
本ワサビ泥棒、コンビニたてこもり事件、カラスによる宝石の盗難被害、そこから派生したトーテムポール損壊事件……。
ささやかといえばささやかな、けれど、田舎にしては大騒動の事件に、鬼刑事黒川鈴木(姓・名)が果敢に挑みます。
本格好きの心をくすぐるような謎解きはもちろんですが、本書の一番の面白さは、主人公である彼を取り巻く、愉快な脇役たちとの掛け合い。まるで、上質なシチュエーションコメディを観ているかのような、大爆笑必死の面白さなのです。
文庫に収録されている著者のあとがきから引用すると、
「黒川さんの奥さんは神出鬼没でどこまでもフリーダム。課長はとことんマイペース。白石くんは壮絶な天然ボケをかまし、黒川さんが身もだえする横で、赤木くんはあきらめのため息をつく。」
といったような調子で、静かな田舎の騒がしい警察署の日常を描きだしています。ちなみに、本書の中で最強キャラとなりつつあるのは、黒川さんの奥さんで、彼女の繰り出す容赦のない夫いじめ(暴力は一切ありません。が、精神的ダメージは相当なもの)は、読むたびに笑いを引き起こし、かつ、黒川を心から応援したくなります。
全く役に立たない部下白石と、頼りになるけれどボケはかます部下赤木を引き連れて、刑事黒川鈴木の受難……ではなく、事件の日々をぜひ、手にとってお楽しみください。
シリーズ第2弾、『田舎の刑事の闘病記』も近日刊行予定です。
●ここだけのあとがき
(2009年10月7日)