京都の美大に通う美和は、親友の冴子とともに、姉・雅子のもとを訪ねる。有名彫刻家に嫁いだ雅子は、高級住宅地で暮らしながら自らも創作活動を行なっていた。約束の時間に訪れた二人は、瀕死の状態で倒れている雅子を発見。雅子を運び出したアトリエは、警察の到着時になぜか密室状態となっていた。事件後、雅子の夫・昌は失踪し、愛人と息子の存在も明らかになる。自殺未遂、殺人未遂の両面で捜査が進む中、美和と冴子も調査を始めるが――。本格味溢れる著者初期の本格作、ここに登場。解説=末國善己
黒川博行
(クロカワヒロユキ )1941年生。高校の美術教師の傍ら、1983年に第1回サントリーミステリー大賞に投じ『二度のお別れ』が佳作入選しデビュー。軽妙な会話とトリッキーな内容が読者の支持を集め、『雨に殺せば』『八号古墳に消えて』など一連のシリーズを上梓する。1986年『キャッツアイころがった』で同賞大賞を受賞。96年に「カウント・プラン」で第49回日本推理作家協会賞を受賞。2014年に『破門』で第151回直木賞を受賞。