判型:文庫判
ページ数:808ページ
初版:1985年7月26日
ISBN:978-4-488-40003-3
Cコード:C0193
文庫コード:M-ん-1-3
犯罪心理の描写に冴えをみせた大下宇陀児。「情獄」「凧」等はその本領が存分に発揮された傑作であり、『虚像』は見事な到達点である。「発狂」で驚くべき早熟ぶりをみせた角田喜久雄が、従来、日本になかった本格探偵小説をと意気込んで書いた『高木家の惨劇』は本格長編時代の夜明けを告げた。中島河太郎編の著者略年譜を付す。解説=日影丈吉/挿絵=横山隆一・山名文夫
大下宇陀児
(オオシタウダル )1896年長野県生まれ。九州帝国大学卒。1925年に第一作「金口の巻煙草」を〈新青年〉に発表、29年〈週刊朝日〉連載の『蛭川博士』で人気作家となる。独自のロマンチック・リアリズムのもと犯罪心理や風俗描写に優れた探偵小説界の巨匠として、江戸川乱歩、甲賀三郎とならんで戦前の日本探偵小説の三大家に数えられる。51年『石の下の記録』が第4回探偵作家クラブ賞を受賞、翌年から54年まで探偵作家クラブ会長を務める。66年没。
角田喜久雄
(ツノダキクオ )1906年横須賀生まれ。22年に最初の探偵小説「毛皮の外套を着た男」が〈新趣味〉の探偵小説募集に入選、26年「発狂」が第1回サンデー毎日大衆文芸賞に入選して、同年同題の作品集を刊行する。37年『妖棋伝』で第4回直木三十五賞の候補になるなど注目をあつめ、『髑髏銭』『風雲将棋谷』を始めとする時代伝奇小説で一躍人気作家となる。戦後まもない47年に本格的な長編探偵小説『高木家の惨劇』を刊行、58年「笛吹けば人が死ぬ」で第11回日本探偵作家クラブ賞を受賞。94年没。