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警視庁を辞めて8ヶ月、雑誌への寄稿で食いつないでいた俺を、においたつような美女が訪ねて来た。久我山にある家から出て行く男を、1週間尾行するという依頼。元刑事の俺にとって、1週間の尾行など簡単な仕事。それに報酬は200万円と、一抹の不安を感じつつもさっそく久我山へ向かう。目的の男は、1日中買い食いをしながら東京中を歩き回るのみ。うんざりした俺が、知人の夢子に尾行を任せた3日目、男は新宿の公園で餓死してしまう。直前まで飲み食いしていた男の身に何が起こったのか? 若き日の柚木草平を描いたシリーズ第5弾。文庫オリジナル。解説=新保博久
樋口有介
(ヒグチユウスケ )1950年群馬県生まれ。國學院大學中退。88年、『ぼくと、ぼくらの夏』でサントリーミステリー大賞読者賞を受賞しデビュー。『風少女』が第103回直木賞候補となる。『彼女はたぶん魔法を使う』に始まる〈柚木草平シリーズ〉をはじめ、青春味溢れる作品で人気を博す。著作は他に、『林檎の木の道』『雨の匂い』『ピース』『夢の終わりとそのつづき』『捨て猫という名前の猫』などがある。