入り組んでいてせわしない。いつも飛び回っていて、その気になればいやというほど刺せる――〈蜂の巣〉。それが彼女の綽名。30年前に殺され、ぼくが死体を発見した美少女だ。彼女の事件を書く試みに、作家であるぼくはスランプ脱出の望みを賭けた。真相を探るにつれ、絡みあい、もつれあう過去と現在、親と子、男と女。そして、ぼくを脅し指図する謎の影……。鬼才の挑戦作! 解説=豊崎由美
ジョナサン・キャロル
アメリカの作家。1949年ニューヨーク生まれ。ウィーン在住。80年『死者の書』でデビュー。88年「友の最良の人間」で世界幻想文学大賞を、92年『犬博物館の外で』で英国幻想文学大賞を受賞。その作風はしばしば「ダーク・ファンタジイ」と称され、日常生活に突如として夢や幻想、怪異など超常的な要素が出現する展開を特徴とする。主な著作に『炎の眠り』『木でできた海』などがある。
浅羽莢子
(アサバサヤコ )1953年生まれ。英米文学翻訳家。東京大学文学部卒。主な訳書にセイヤーズ『学寮祭の夜』、チャーチル『ゴミと罰』、マクラウド『納骨堂の奥に』、キャロル『死者の書』、ピーク『ゴーメンガースト』など多数。2006年歿。