*第75回日本推理作家協会賞【評論・研究部門】受賞作
江戸川乱歩編『世界推理短編傑作集』を擁する創元推理文庫が21世紀の世に問う、新たな一大アンソロジー。およそ二百年、三世紀にわたる短編ミステリの歴史を彩る名作・傑作を書評家の小森収が厳選、全6巻に集成する。第1巻にはモームやフォークナーなどの文豪、サキやビアスら短編の名手、ウールリッチやコリアたち俊才による珠玉の12編をすべて新訳で、編者の評論と併せ贈る。
「霧の中」リチャード・ハーディング・デイヴィス 猪俣美江子訳
「クリームタルトを持った若者の話」ロバート・ルイス・スティーヴンスン 直良和美訳
「セルノグラツの狼」サキ 藤村裕美訳
「四角い卵」サキ 藤村裕美訳
「スウィドラー氏のとんぼ返り」アンブローズ・ビアス 猪俣美江子訳
「創作衝動」サマセット・モーム 白須清美訳
「アザニア島事件」イーヴリン・ウォー 門野集訳
「エミリーへの薔薇」ウィリアム・フォークナー 深町眞理子訳
「さらばニューヨーク」コーネル・ウールリッチ 門野集訳
「笑顔がいっぱい」リング・ラードナー 直良和美訳
「ブッチの子守歌」デイモン・ラニアン 直良和美訳
「ナツメグの味」ジョン・コリア 藤村裕美訳
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「短編ミステリの二百年」小森収
序章 『世界推理短編傑作集』の影の内閣(シャドウキャビネット)
1 最初の一世紀
2 シャーロック・ホームズ登場
3 霧の都の奇譚
4 ふたりの〈黒い〉小説家
5 所謂(いわゆる)「奇妙な味」について
6 サマセット・モームに寄り道
7 ボーダー・ラインのケース
8 偉大な例外――アガサ・クリスティ
9 『犯罪文学傑作選』とウィリアム・フォークナー
第一章 雑誌の時代に
1 スリックとパルプの狭間で――ウールリッチ=アイリッシュ
2 アメリカン・ユーモアとミステリの接近
3 スリックマガジンのクライムストーリイ――ジョン・コリア
4 成功した作家――ロアルド・ダール
小森収
(コモリオサム )編集者、評論家、作家。1958年福岡県生まれ。大阪大学人間科学部卒業。演劇評論家、文芸書の編集者として活動するほか書評・ミステリ評論の分野でも精力的に活躍する。主な著書・編書に『小劇場が燃えていた』『はじめて話すけど…』『本の窓から』『都筑道夫 ポケミス全解説』、小説の著作に『終の棲家は海に臨んで』『土曜日の子ども』『明智卿死体検分』がある。2022年、三世紀にわたる短編ミステリの歴史を俯瞰したアンソロジー&評論書『短編ミステリの二百年』(全6巻)で第75回日本推理作家協会賞および第22回本格ミステリ大賞(ともに評論・研究部門)を受賞。
深町眞理子
(フカマチマリコ )1931年生まれ。1951年、都立忍岡高校卒業。英米文学翻訳家。主な訳書に、ドイル《シャーロック・ホームズ》シリーズ、ギャスケル《アトランの女王》全3巻、オールディス『グレイベアド』、エラリー・クイーン編『ミニ・ミステリ傑作選』など多数。