*第75回日本推理作家協会賞【評論・研究部門】受賞作
第5巻にはイーリイやトゥーイといった短編巧者、グリーンやフレムリンなど英国の大物に加え、謎解きミステリの分野で独自の輝きを放った作家たち──ケメルマン、ヤッフェ、ポーター、ギャレット──の多彩な傑作、全12編を収録。評論では、1960年代に第一線で活躍した作家の個性を見極め、同時代の英国の状況や、スパイ小説ブーム、SFの影響など多岐にわたる話題を取り上げる。
「ある囚人の回想」スティーヴン・バー 門野集訳
「隣人たち」デイヴィッド・イーリイ 藤村裕美訳
「さよなら、フランシー」ロバート・トゥーイ 藤村裕美訳
「臣民の自由」アヴラム・デイヴィッドスン 門野集訳
「破壊者たち」グレアム・グリーン 門野集訳
「いつまでも美しく」シーリア・フレムリン 直良和美訳
「フクシアのキャサリン、絶体絶命」リース・デイヴィス 猪俣美江子訳
「不可視配給株式会社」ブライアン・W・オールディス 深町眞理子訳
「九マイルは遠すぎる」ハリイ・ケメルマン 白須清美訳
「ママは願いごとをする」ジェームズ・ヤッフェ 藤村裕美訳
「ここ掘れドーヴァー」ジョイス・ポーター 直良和美訳
「青い死体」ランドル・ギャレット 白須清美訳
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「短編ミステリの二百年」小森 収
第九章 再び雑誌の時代に(承前)
6 ジェラルド・カーシュ補遺
7 屹立する作家の肖像ACT2
第十章 短編ミステリ黄金時代の諸侯
1 正体不明の技巧派――スティーヴン・バー
2 ハードボイルド派のタレント――J・D・マクドナルド他
3 デイヴィッド・イーリイの全貌
4 ロバート・トゥーイ1969
5 ミステリマガジン・ライター――ジェイムズ・ホールディング
6 ウェストレイクは光り輝く
7 ロバート・L・フィッシュのふたつの顔
8 ジョー・ゴアズとDKAファイル
第十一章 007狂騒曲
1 007登場前夜
2 短編におけるジェイムズ・ボンド
3 スパイが多すぎる
4 007ブーム下の職人作家――マイケル・ギルバートを例に
5 狂乱ブームの残したもの
第十二章 大西洋の向こう側で
1 ロード・ダンセイニのミステリ短編集
2 ミステリにもっとも近いストレイトノヴェリスト――グレアム・グリーン
3 ブリティッシュ・クライムストーリイの先駆
4 規格外のアメリカ作家――パトリシア・ハイスミス
5 イギリスのさらに周縁にて
第十三章 隣接ジャンルの研究(2)――隣りのSF
1 異色作家短篇集とSF
2 SF作家としてのレイ・ブラッドベリ
3 フレドリック・ブラウンのSF短編集
4 五〇年代短編SFのエース――ロバート・シェクリイ
5 P・K・ディックとミステリマガジン
6 スタージョンのミステリ作家としての顔
7 世界の中心で暴力を描いた男――ハーラン・エリスン
8 カート・ヴォネガットJr.のころ
9 SFと諷刺小説の狭間で――ウィリアム・テン
10 ミステリマガジンのSF作家たち
第十四章 パズルストーリイの命脈
1 短編パズルストーリイの衰勢
2 九マイルは遠すぎる――モダン・アームチェアディテクティヴの狼煙
3 アームチェアディテクティヴの完成――ブロンクスのママ
4 異端の本格――ジョイス・ポーターとランドル・ギャレット
小森収
(コモリオサム )編集者、評論家、作家。1958年福岡県生まれ。大阪大学人間科学部卒業。演劇評論家、文芸書の編集者として活動するほか書評・ミステリ評論の分野でも精力的に活躍する。主な著書・編書に『小劇場が燃えていた』『はじめて話すけど…』『本の窓から』『都筑道夫 ポケミス全解説』、小説の著作に『終の棲家は海に臨んで』『土曜日の子ども』『明智卿死体検分』がある。2022年、三世紀にわたる短編ミステリの歴史を俯瞰したアンソロジー&評論書『短編ミステリの二百年』(全6巻)で第75回日本推理作家協会賞および第22回本格ミステリ大賞(ともに評論・研究部門)を受賞。