三度笠を被り長い楊枝をくわえた姿で、無宿渡世の旅を続ける木枯し紋次郎が出あう事件の数々。兄弟分の身代わりとして島送りになった紋次郎がある噂を聞きつけ、島抜けして事の真相を追う「赦免花は散った」。瀕死の老商人の依頼で家出した息子を捜す「流れ舟は帰らず」。ミステリと時代小説、両ジャンルにおける名手が描く、凄腕の旅人にして名探偵が活躍する傑作10編を収録する。解説=末國善己
「赦免花は散った」
「流れ舟は帰らず」
「女人講の闇を裂く」
「大江戸の夜を走れ」
「笛が流れた雁坂峠」
「霧雨に二度哭いた」
「鬼が一匹関わった」
「旅立ちは三日後に」
「桜が隠す嘘二つ」
「明日も無宿の次男坊」
笹沢左保
(ササザワサホ )1930年東京府生まれ。関東学院高等部卒。60年『招かれざる客』で第5回江戸川乱歩賞次席となり、作家デビュー。61年『人喰い』で第14回日本探偵作家クラブ賞、99年に第3回日本ミステリー文学大賞を受賞。本格ミステリや時代小説を多く書き、〈木枯し紋次郎シリーズ〉はテレビドラマ化され、一世を風靡した。他の著作に『霧に溶ける』『結婚って何さ』『空白の起点』などがある。2002年没。