全身をグレイ一色につつんだ異色の名探偵・幽霊紳士が事件関係者の前に現われた時、謎は解き明かされる――どんでん返しの趣向に満ちた全12話で構成される『幽霊紳士』。若き日の名探偵の活躍を描くホームズ・パスティーシュなど、世界各都市を舞台にした奇怪な出来事を描く8編を収録する『異常物語』。時代小説の大家による、本格ミステリ連作集と、長らく入手不可能だった奇想に満ちた短編集を合本で贈る。解説=末國善己
「幽霊紳士」
女社長が心中した
老優が自殺した
女子学生が賭をした
不貞の妻が去った
毒薬は二個残った
カナリヤが犯人を捕えた
黒い白鳥が殺された
愛人は生きていた
人妻は薔薇を怖れた
乞食の義足が狙われた
詩人は恋をすてた
猫の爪はとがっていた
*
「異常物語」
生きていた独裁者
妃殿下の冒険
5712
名探偵誕生
午前零時の殺人
妖婦の手鏡
密室の狂女
異常物語
柴田錬三郎
(シバタレンザブロウ )1917年岡山県生まれ。慶應義塾大学卒。在学中『三田文学』に「十円紙幣」を発表。戦後、編集者生活を経て、51年『イエスの裔』で第26回直木賞を受賞。代表作に『御家人斬九郎』『赤い影法師』『徳川太平記』などがあり、〈眠狂四郎シリーズ〉は一大ブームとなった。1978年没。