ころび伴天連(バテレン)の父と武士の娘である母を持ち、虚無をまとう孤高の剣士・眠狂四郎。彼は時に老中・水野忠邦の側頭役から依頼を受け、時に旅で訪れた土地で謎と遭遇して、数々の難事件を解決する名探偵でもあった。密室状態にある大名屋敷の湯殿で、奥女中が相次いで不可解な死を遂げる「湯殿の謎」。寝室で花嫁の首が刎(は)ねられ、代りに罪人の首が継ぎ合せられていた「花嫁首」。時代小説の大家が生み出した異色の名探偵が奇怪な事件に挑む、珠玉の21編を収録する。解説=末國善己
「雛の首」
「禁苑の怪」
「悪魔祭」
「千両箱異聞」
「切腹心中」
「皇后悪夢像」
「湯殿の謎」
「疑惑の棺」
「妖異碓氷峠」
「家康騒動」
「毒と虚無僧」
「謎の春雪」
「からくり門」
「芳香異変」
「髑髏屋敷」
「狂い部屋」
「恋慕幽霊」
「美女放心」
「消えた兇器」
「花嫁首」
「悪女仇討」
柴田錬三郎
(シバタレンザブロウ )1917年岡山県生まれ。慶應義塾大学卒。在学中『三田文学』に「十円紙幣」を発表。戦後、編集者生活を経て、51年『イエスの裔』で第26回直木賞を受賞。代表作に『御家人斬九郎』『赤い影法師』『徳川太平記』などがあり、〈眠狂四郎シリーズ〉は一大ブームとなった。1978年没。