ある日、庭先で好物のデビラ(※)を叩いていると、ニューヨーク研修帰りの河田警部が半年ぶりにやって来た。例のごとく、夕飯時という絶妙なタイミングでやって来る。自分で解決できない難事件を、ぼくの妻に解かせようという魂胆だ。高名な詩人が謎の詩を残して殺害された事件や、ニューヨーク時代にわざわざ国際電話をかけてきた事件など、不可思議な6編を収録。讃岐料理や郷土料理で彩られた《ミミズクとオリーブ》最新作。文庫オリジナル。解説=竹内真
※瀬戸内海で獲れるカレイの一種。デベラと呼ぶ地域もある。干物にして、食べる前に叩いてから炙って食す。
●収録作品
「ト・アペイロン」
「NY・アップル」
「わが身世にふる、じじわかし」
「いないいないばあ」
「薄明の王子」
「さみだれ」
芦原すなお
(アシハラスナオ )1949年香川県生まれ。早稲田大学文学部卒、同大学院博士課程中退。86年『スサノオ自伝』でデビュー。90年発表の『青春デンデケデケデケ』で第27回文藝賞、第105回直木三十五賞を受賞。主な著書に『ミミズクとオリーブ』『嫁洗い池』『わが身世にふる、じじわかし』『月夜の晩に火事がいて』『雪のマズルカ』などがある。