前作『嫁洗い池』の最終話にて、河田警部がアメリカはニューヨークに研修へと旅立ってから半年。お待たせいたしました。河田警部も堂々と凱旋帰国し、難事件とともに“ぼく”を訪ねます。
毎回恒例の夕飯時という、絶妙なタイミングに河田警部はやってきます。ちなみに、今回登場するお料理をざっと紹介すると、デビラ、ちらし寿司、お好み焼き、わけんぎゃい(ワケギの芥子酢味噌和え)、ソラマメ料理、八王子ラーメン、イリコ飯など等。ミステリの妙味に加えて、各話にちりばめられた、おいしそうな料理の数々もご堪能ください。
ちなみに「じじわかし」とは、爺さんのかどわかし事件のことです。決して、「じじ沸かし」=爺さん熱湯殺人事件、ではありませんのでご注意を。
この事件のあらましを紹介しますと。八王子と高尾で、二人の老人男性が行方不明になります。二人は従兄弟同士で、酒造会社の社長と専務。そして、八王子と高尾の警察署宛に謎の手紙が届けられます。夏目漱石の『我輩は猫である』の冒頭である「どこにをるのか頓と見当がつかぬ」で始まる謎の手紙。不可思議な暗号文に困り果てた河田警部は、“ぼく”のもとを訪ねます。料理の腕もさることながら、抜群の推理力を発揮する妻は暗号文をいかに読み解くか――。
■ 表題作「わが身世にふる、じじわかし」を含め、以下の6作品を収録
「ト・アペイロン」
「NY・アップル」
「わが身世にふる、じじわかし」
「いないいないばあ」
「薄明の王子」
「さみだれ」