ひとつの真実にむかって書かれる推理小説から、なぜこれほどまでに多様な “読む” 面白さが生まれるのか。北村薫、坂口安吾から中条省平、若島正まで――作家・評論家・翻訳家たちは、推理小説をいかに読み解いたか。短編小説から英米ミステリ史を辿る大著『短編ミステリの二百年』で第75回日本推理作家協会賞と第22回本格ミステリ大賞を受賞した編者によるアンソロジー。ミステリに関するエッセイ・解説・評論の数多あるなかから「明快であること」と「内容が充実していること」を念頭に名文を選りすぐった、ミステリ・ファン必携の一冊。
はしがき
北村薫「解釈について」「解釈について(続き)」
坂口安吾「推理小説について」
都筑道夫「トリック無用は暴論か」「必然性と可能性」
瀬戸川猛資「影の薄い大探偵〈ポアロ〉」「ヴァージル・ティッブス」
法月綸太郎「紐育のイギリス人――『わが子は殺人者』(P・クェンティン)解説」
各務三郎「誤解された冒険小説」「アイ・スパイ!」
北上次郎「不信のヒーロー」「フランシスの復活」
石上三登志「女嫌いの系譜、又は禁欲的ヒーロー論」
小鷹信光「ポイズンヴィルの夏」
池上冬樹「“清水チャンドラー”の弊害について」
森下祐行「「本格ミステリ冬の時代」はあったのか」
丸谷才一「なぜ戦争映画を見ないか」「社会派とは何か」
笠井潔「善人と怪物――北村薫『盤上の敵』」
井家上隆幸「イラン、イスラム革命後十年 船戸与一『砂のクロニクル』」
中条省平「書簡体を用いる 夢野久作『瓶詰地獄』」
若島正「明るい館の秘密――クリスティ『そして誰もいなくなった』を読む」
索引
北村薫
(キタムラカオル )1949年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。89年『空飛ぶ馬』でデビュー。91年『夜の蝉』が第44回日本推理作家協会賞(短編および連作短編集部門)を、2006年『ニッポン硬貨の謎 エラリー・クイーン最後の事件』が第6回本格ミステリ大賞(評論・研究部門)を、09年『鷺と雪』が第141回直木賞を受賞。16年に第19回日本ミステリー文学大賞を受賞。主な著書に『秋の花』『六の宮の姫君』『朝霧』『太宰治の辞書』『スキップ』『ターン』『リセット』『街の灯』『玻璃の天』『覆面作家は二人いる』『冬のオペラ』『盤上の敵』『語り女たち』『ひとがた流し』『いとま申して 『童話』の人びと』『謎物語 あるいは物語の謎』『ミステリは万華鏡』『詩歌の待ち伏せ』『北村薫のうた合わせ百人一首』『読まずにはいられない 北村薫のエッセイ』がある。
小森収
(コモリオサム )編集者、評論家、作家。1958年福岡県生まれ。大阪大学人間科学部卒業。演劇評論家、文芸書の編集者として活動するほか書評・ミステリ評論の分野でも精力的に活躍する。主な著書・編書に『小劇場が燃えていた』『はじめて話すけど…』『本の窓から』『都筑道夫 ポケミス全解説』、小説の著作に『終の棲家は海に臨んで』『土曜日の子ども』『明智卿死体検分』がある。2022年、三世紀にわたる短編ミステリの歴史を俯瞰したアンソロジー&評論書『短編ミステリの二百年』(全6巻)で第75回日本推理作家協会賞および第22回本格ミステリ大賞(ともに評論・研究部門)を受賞。