― サスペンス―
自己破壊衝動に苛まれる男の物語「落ちる」、万年平行員のささやかな逆襲「ある脅迫」、完全犯罪かと思われた事件の皮肉な露顕「笑う男」――第40回直木賞を受けた3編など、多彩な趣向に満ちた初期秀作10編を収める。……
半ば厭世観に囚われた篠原喬一郎は、三度命を狙われたとき甘んじて殺されてやろうとさえ思う。しかしその相手だけは知っておきたいと、犯人候補者六人の許へ。狸親父が贖罪の巡礼を行う『人でなしの遍歴』……
極悪非道な強腰で成り上がった実業家鯉淵丈夫は、過去買った恨みも数知れず。肚に据えかねた七人が鯉淵めを亡き者にしようと秘策を凝らすが……
神保町に店を構える村雲書店の跡を継ぐのは長女の婿か次女の婿か? 余命幾許もない主人が考えだした後継者選びの方法――それは十冊の稀書の収集合戦だった!
失語症状を呈し始め役者生命の危機に瀕する若手歌舞伎役者と、後ろめたさを忍びつつ夫を気遣う若妻。梨園を巻き込んだ三幕の悲劇に際会した名探偵の導く真相は?
拉致され山荘に閉じ込められた初対面の「おっぺ」と「ピンクル」は、見知らぬ男の死体までしょいこむ破目に。前夜の記憶をたどりニュースを聴くに及んで……
とある5月の逢魔が時、紅薔薇の香りに惹かれて迷い込んだ洋館で、花梨は亡父の面影をうつす館の主、苑田俊春に出会う。誘われるまま館に通ううち……
危篤の父親を安心させるために、花嫁のふりをしてほしい。報酬につられて奇妙な申し出に乗ってしまった主人公達が繰り広げる悲喜劇。
遅ればせの新婚旅行で怪しい素振りをみせる夫、疑心暗鬼の妻。掌を返すかの如き鮮やかな終幕へ昇華される、日影ミステリの佳品。