電光看板に貼り付けられた不規則な文字列のメモ、夜の庭にかわるがわる現れる悪気なさそうな闖入者たち──猫丸という風変わりな名前の“先輩”は日頃ふらふらしているのに、なにやら事件を見つけては猫のごとき目聡さで首をつっこむ。そして、どうにも理屈の通らない謎も、先輩が得意の饒舌をふるううちにあっという間に解き明かされていくから不思議だ。全五編を収める連作集。解説=三橋暁
「ねこちゃんパズル」
「恐怖の一枚」
「ついているきみへ」
「海の勇者」
「月下美人を待つ庭で」
倉知淳
(クラチジュン )1962年静岡県生まれ。日本大学芸術学部演劇学科卒業。93年、『競作 五十円玉二十枚の謎』への投稿を経て翌94年、『日曜の夜は出たくない』で本格的な作家デビューを飾る。以後、ユーモラスで親しみやすい作風ながら、ミステリとしての完成度にも妥協しない、高いクオリティの作品群を書き続けている。2001年、『壺中の天国』で第1回本格ミステリ大賞を受賞。他の著作に『過ぎ行く風はみどり色』『星降り山荘の殺人』『幻獣遁走曲 猫丸先輩のアルバイト探偵ノート』『ほうかご探偵隊』『片桐大三郎とXYZの悲劇』『皇帝と拳銃と』『世界の望む静謐』などがある。