学生運動に伴うリンチ事件の首謀者として、三年間の刑務所生活を終え、ひっそりと男は暮らしていた。ある日彼は、自分が誰かに尾行されていることに気づく。待ち伏せてみるとそれは昔の仲間であったのだが……。頭蓋の奥で響く囁きに誘われるように飛翔を試みた、かつて革命の時生きた男は、何を思い、何を求めるのか。矢吹駆の罪と罰を描いた、シリーズ第ゼロ作としても知られる、笠井潔の原点! 幻の処女長編テロリズム小説。著者あとがき=笠井潔/解説=竹田青嗣・小森健太朗
笠井潔
(カサイキヨシ )1948年東京都生まれ。79年にデビュー作『バイバイ、 エンジェル』で第6回角川小説賞を受賞。 ミステリ作家、伝奇作家として活躍する傍ら、精力的な評論活動を展開。 98年に『本格ミステリの現在』の編者として第51回日本推理作家協会賞を受賞、 2003年には『オイディプス症候群』『探偵小説論序説』で、第3回本格ミステリ大賞を、小説、評論・研究の両部門で受賞。 主な著作は『テロルの現象学』『哲学者の密室』『ヴァンパイヤー戦争』『魔』など。