燦然と輝き続けるアンチ・ミステリの雄編、中井英夫著『虚無への供物』。当初この作品は塔晶夫の名前で発表されていた。だが、もしこの塔晶夫が中井とは別に存在したとしたら……。『虚無への供物』の発表された日と、中井の命日が同じなのは、偶然ではなく何者かの作為によるものではないのか……。そして至高の作品にとって作者の存在とは何なのか。『天啓の宴』に続く、刺激的な笠井潔もうひとつの傑作ミステリ・シリーズ。 解説=渡邉大輔
笠井潔
(カサイキヨシ )1948年東京都生まれ。79年にデビュー作『バイバイ、 エンジェル』で第6回角川小説賞を受賞。 ミステリ作家、伝奇作家として活躍する傍ら、精力的な評論活動を展開。 98年に『本格ミステリの現在』の編者として第51回日本推理作家協会賞を受賞、 2003年には『オイディプス症候群』『探偵小説論序説』で、第3回本格ミステリ大賞を、小説、評論・研究の両部門で受賞。 主な著作は『テロルの現象学』『哲学者の密室』『ヴァンパイヤー戦争』『魔』など。