古今東西のさまざまな遺品を収蔵する遺品博物館。寄贈の希望者が亡くなると、謎めいた学芸員、吉田・T・吉夫が収蔵する物を選定するべくやってくる。それらは、死者自身の人生のみならず、残された人々にとっても重要な意味を持つ品々ばかりだった。彼が遺品と引き換えに残された者たちにもたらすのは、救済か破局か──。熟練の技巧が冴え渡る、死者と生者を繋ぐ八つの謎物語。解説=三島政幸
太田忠司
(オオタタダシ )1959年愛知県生まれ。名古屋工業大学卒業。81年、「帰郷」が「星新一ショートショート・コンテスト」で優秀作に選ばれる。『僕の殺人』以下の〈殺人三部作〉などで新本格の旗手として活躍。2004年発表の『黄金蝶ひとり』で第21回うつのみやこども賞受賞。『刑事失格』に始まる〈阿南〉シリーズほか、〈狩野俊介〉〈探偵・藤森涼子〉〈ミステリなふたり〉〈名古屋駅西喫茶ユトリロ〉など多くのシリーズ作品を執筆。その他『奇談蒐集家』『怪異筆録者』『遺品博物館』『麻倉玲一は信頼できない語り手』『喪を明ける』など著作多数。