「君がどういう理由で金を欲しがっているのか、私は知らない。知る必要もない。だが、こういう手段を使うのは間違っている」目の前の犯罪を止めるべく、阿南はコンビニ強盗の少年に貯金の50万円を貸した。しかし後日、別のコンビニで傷害事件が発生。犯人が口にした言葉は「もっとないのか。他所じゃ50万くれたぞ」――責任を感じた阿南は少年の行方を追い始める。シリーズ第三弾。解説=村上貴史
太田忠司
(オオタタダシ )1959年愛知県生まれ。名古屋工業大学卒業。81年、「帰郷」が「星新一ショートショート・コンテスト」で優秀作に選ばれる。『僕の殺人』以下の〈殺人三部作〉などで新本格の旗手として活躍。2004年発表の『黄金蝶ひとり』で第21回うつのみやこども賞受賞。『刑事失格』に始まる〈阿南〉シリーズほか、〈狩野俊介〉〈探偵・藤森涼子〉〈ミステリなふたり〉〈名古屋駅西喫茶ユトリロ〉など多くのシリーズ作品を執筆。その他『奇談蒐集家』『怪異筆録者』『遺品博物館』『麻倉玲一は信頼できない語り手』『喪を明ける』など著作多数。