未練を残して死んだ者は鬼となり、水源を涸らし村を滅ぼす──。鬼の未練の原因を突き止めて解消し、常世に送れるのは、八尾一族の「烏目役」と「水守」ただ二人のみ。大正12年、H帝国大学に通う八尾清次郎に、烏目役の従兄が死んだと報せが届いた。新たな烏目役として村を訪ねた清次郎。そこで出会った美しい水守と、過酷な運命に晒される清次郎を描く、深愛に満ちた連作集。
「水面水鬼」
「黒羽黒珠」
「母子母情」
「青雲青山」
「常世現世」
乾ルカ
(イヌイルカ )1970年北海道生まれ。2006年「夏光」で第86回オール讀物新人賞を受賞し、受賞作を収録した短編集でデビュー。10年『あの日にかえりたい』で第143回直木三十五賞の、『メグル』で第13回大藪春彦賞の候補となる。主な著書に『わたしの忘れ物』『おまえなんかに会いたくない』『葬式同窓会』などがある。