まだ雪の残る3月、H大に通う中辻恵麻が学生部の女性職員から無理矢理に紹介された、商業施設の忘れ物センターでのアルバイト。夏休みに行ったインターンシップでの失敗を引きずる、遠慮がちで自己肯定できない恵麻に、なぜ? 忘れ物の持ち主やセンターのスタッフとの交流の中で、恵麻が見いだしたものとは──。六つの忘れ物を巡って描かれる、心にじんわりと染みる連作集。解説=若林踏
「妻の忘れ物」
「兄の忘れ物」
「家族の忘れ物」
「友の忘れ物」
「彼女の忘れ物」
「私の忘れ物」
乾ルカ
(イヌイルカ )1970年北海道生まれ。2006年「夏光」で第86回オール讀物新人賞を受賞し、受賞作を収録した短編集でデビュー。10年『あの日にかえりたい』で第143回直木三十五賞の、『メグル』で第13回大藪春彦賞の候補となる。主な著書に『わたしの忘れ物』『おまえなんかに会いたくない』『葬式同窓会』などがある。