数多ある短篇のなかでも群を抜いた奇想を誇る「天狗」を表題とする本書は、大坪の本領ともいうべき代表作を取り揃えた〈奇想篇〉と、単行本未収録作や変名で書かれた新発見作を含む〈時代篇〉を収めた。また、「天狗」と「密偵の顔」はそれぞれ初稿版と異稿版も併載する。佐藤春夫に師事し、都筑道夫の第一の師でもあった著者の才気が凝縮した全集第二巻。編者解題=日下三蔵/巻末エッセイ=皆川博子
第一部 奇想篇
「天狗」
「盲妹(もんまい)」
「虚影」
「花束(ブーケ)」
「ひげの美について」(「ひげ」は「髟」に「冉」)
「桐の木」
「雨男・雪女」
「閑雅な殺人」
「逃避行」
「三ツ辻を振返るな」
「白い文化住宅」
「細川あや夫人の手記」
第二部 時代篇
「ものぐさ物語」
「真珠橋」
「密偵の顔」
「武姫伝」
「河童寺」
「霧隠才蔵」
「春情狸噺」
「野武士出陣」
「驢馬修業」
「硬骨に罪あり」
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「天狗」(初稿版)
「変化の貌」(「密偵の顔」異稿版)
日下三蔵
(クサカサンゾウ )1968年神奈川県生まれ。専修大学文学部卒。書評家、フリー編集者。主な著書に『日本SF全集・総解説』、『ミステリ交差点』、主な編著に、《年刊日本SF傑作選》(大森望との共編)、《日本SF全集》、《中村雅楽探偵全集》、《都筑道夫少年小説コレクション》、『天城一の密室犯罪学教程』ほか多数。