革命前夜のパリ。対立する軍隊と群衆の間に響いた一発の銃声が、一斉射撃を招いた。だが若き詩人シャルルは、その銃弾が群衆に紛れて取材中の、ある新聞記者を狙って背後から撃たれたものであることを目撃してしまう。逃走する黒い影の正体の解明を依頼され、名探偵デュパンは捜査を開始した。新聞王ジラルダンや、文豪バルザック、様々な人物の思惑と共に事件は肥大していく――。二月革命前後、爛熟の都に蠢く群像を壮大に描く巨匠ポオへの熱いオマージュ!
笠井潔
(カサイキヨシ )1948年東京都生まれ。79年にデビュー作『バイバイ、 エンジェル』で第6回角川小説賞を受賞。 ミステリ作家、伝奇作家として活躍する傍ら、精力的な評論活動を展開。 98年に『本格ミステリの現在』の編者として第51回日本推理作家協会賞を受賞、 2003年には『オイディプス症候群』『探偵小説論序説』で、第3回本格ミステリ大賞を、小説、評論・研究の両部門で受賞。 主な著作は『テロルの現象学』『哲学者の密室』『ヴァンパイヤー戦争』『魔』など。