タンテイショウセツトキゴウテキジンブツ(キャラ/キャラクター)

探偵小説と記号的人物

ミネルヴァの梟は黄昏に飛びたつか?

笠井潔


探偵小説と記号的人物

ジャンル
国内ミステリ > 評論・研究
ノンフィクション・その他 > 評論・研究
レーベル
キイ・ライブラリー

判型:四六判上製
ページ数:332ページ
初版:2006年7月28日

ISBN:978-4-488-01521-3
Cコード:C0095

装画:山野辺若
装幀:東京創元社装幀室


内容紹介

京極夏彦や森博嗣以降の探偵小説は、キャラクター小説的な色合いを強く帯びてきている。「人物、性格」という意味のほかに、「文字、記号」という意味も持つ「キャラクター」という単語。このキーワードを頼りに、探偵小説に何が起こっているのか、そして探偵小説はどこへ向かおうとしているのかを真っ向から論じる。巽昌章、鷹城宏との往復書簡や、若手ミステリ作家の北山猛邦、辻村深月、米澤穂信との座談会も併せて収録。『探偵小説と二〇世紀精神』に続く画期的な評論集。著者あとがき=笠井潔


目次

T 記号的キャラクターと精神的外傷

1 ジャンルXという提案
2 登場人物とキャラ
3 「キャラ萌え」の発生
4 無意識と内面性の深化
5 サイコとトラウマ
6 トラウマのあるキャラクター
7 大量死と大量生のトラウマ
8 トラウマと記憶戦争
9 構成されるトラウマ
10 探偵小説とトラウマの主題

U 大量死の経験と「キャラ」

11 多重人格とキャラ的なもの
12 内面領域の細分化と表層化
13 高度消費社会とリアリティの変容
14 名探偵の記号性
15 記号的キャラクターと探偵小説的論理
16 手塚治虫と横溝正史
17 探偵小説的論理のリアリティ
18 震災経験と探偵小説形式
19 倒錯的観念と逸脱的妄想

V 清涼院流水という「問題」

20 探偵小説と「あえて」の意識
21 ポストモダン第一世代と第二世代
22 境界例と二〇世紀精神
23 多重人格と固有名の消失
24 設定と物語の分離
25 世界観としての「大きな物語」
26 物語消費とデータベース消費
27 深層のデータベースと表層のシミュラークル
28 探偵小説と「大きな非物語」
29 二つの「大きな非物語」
30 ジャンルXと探偵小説形式

本格ミステリ往復書簡(笠井潔+巽昌章、笠井潔+鷹城宏)

座談会 現代本格の行方(北山猛邦+辻村深月+米澤穂信+笠井潔)



笠井潔

(カサイキヨシ )

1948年東京都生まれ。79年にデビュー作『バイバイ、 エンジェル』で第6回角川小説賞を受賞。 ミステリ作家、伝奇作家として活躍する傍ら、精力的な評論活動を展開。 98年に『本格ミステリの現在』の編者として第51回日本推理作家協会賞を受賞、 2003年には『オイディプス症候群』『探偵小説論序説』で、第3回本格ミステリ大賞を、小説、評論・研究の両部門で受賞。 主な著作は『テロルの現象学』『哲学者の密室』『ヴァンパイヤー戦争』『魔』など。