〈日本ハードボイルド全集〉第六巻は粋人・都筑道夫の巻。自らが翻訳したエド・マクベインの人気シリーズを書き継いだ職人芸の逸品『酔いどれ探偵』と、元刑事の私立探偵を主人公に首都の片隅で起こる事件を円熟の筆致で描く『二日酔い広場』。ニューヨークと東京、東西の大都市を舞台にしたハードボイルド連作短編集二作を合本で贈る。巻末エッセイ=香納諒一/解説=日下三蔵
『酔いどれ探偵』
「背中の女」
「おれの葬式」
「気のきかないキューピッド」
「黒い扇の踊り子」
「女神に抱かれて死ね」
「ニューヨークの日本人」
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『二日酔い広場』
「風に揺れるぶらんこ」
「鳴らない風鈴」
「巌窟王と馬の脚」
「ハングオーバー・スクエア」
「濡れた蜘蛛の巣」
「落葉の杯」
「まだ日が高すぎる」
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『酔いどれひとり街を行く』あとがき
『酔いどれ探偵』解説(淡路瑛一名義)
『ハングオーバーTOKYO』あとがき
『二日酔い広場』解説(久米五郎名義)
都筑道夫
(ツヅキミチオ )1929年東京市生まれ。10代の頃から様々な筆名で小説を発表する。やがて翻訳家に転身、早川書房で日本版〈エラリイ・クイーンズ・ミステリ・マガジン〉の初代編集長を務め、〈ハヤカワ・SF・シリーズ〉の創刊にも尽力。61年に『やぶにらみの時計』で作家として再デビューしたのちは、ミステリやSF、時代小説から脚本、評論に至るまで幅広いジャンルで旺盛な執筆活動を行った。2001年に『推理作家の出来るまで』で第54回日本推理作家協会賞を、02年には第6回日本ミステリー文学大賞を受賞。03年没。
北上次郎
(キタガミジロウ )1946年東京都生まれ。明治大学卒。76年に椎名誠らとともに〈本の雑誌〉を創刊、2001年まで本名の目黒考二名義で編集発行人として携わる。同誌創刊号から書評を執筆、のちに書評家として北上次郎の筆名を使うようになり、1984年『冒険小説の時代』が第2回日本冒険小説協会大賞最優秀評論大賞を、94年『冒険小説論 近代ヒーロー像一〇〇年の変遷』が第47回日本推理作家協会賞を受賞。また、藤代三郎の筆名では競馬エッセイを執筆、〈外れ馬券〉シリーズは27巻に亘って刊行された。2023年没。
日下三蔵
(クサカサンゾウ )1968年神奈川県生まれ。専修大学文学部卒。書評家、フリー編集者。主な著書に『日本SF全集・総解説』、『ミステリ交差点』、主な編著に、《年刊日本SF傑作選》(大森望との共編)、《日本SF全集》、《中村雅楽探偵全集》、《都筑道夫少年小説コレクション》、『天城一の密室犯罪学教程』ほか多数。
杉江松恋
(スギエマツコイ )1968年東京都生まれ。慶應義塾大学卒業。国内外のミステリをはじめとする文芸書やノンフィクションなど、幅広いジャンルの書籍について書評・評論活動を展開。読書会・トークイベントの主催も精力的にこなす。主な著書・共著に『バトル・ロワイアルU 鎮魂歌』『東海道でしょう!』『読み出したら止まらない!海外ミステリーマストリード100』がある。