シンヤノサンポ

深夜の散歩

ミステリの愉しみ

福永武彦中村真一郎丸谷才一


深夜の散歩

ジャンル
ノンフィクション・その他 > エッセイ
レーベル
創元推理文庫(M)

判型:文庫判
ページ数:400ページ
初版:2019年10月31日

ISBN:978-4-488-47812-4
Cコード:C0195
文庫コード:M-ふ-8-2

装画:吉田篤弘
装幀:クラフト・エヴィング商會[吉田篤弘・吉田浩美]


内容紹介

深夜、男は本棚から一冊の探偵小説にそっと手をのばす。そこで彼はひとり書物のなかを出掛ける。走ったり、ひと休みしたり、時々は欠伸したりしながらも、この散歩をなかなか止めることができない。いい気になって歩き廻っていると、そのうち夜が白々と明けてくる。しかし、真犯人を捕まえるまでは、この「深夜の散歩」を途中でやめられないのだ――。
博雅の文学者にして探偵小説愛読家である三人が、海外の探偵小説を紹介する読書エッセイ。探偵小説を読む愉しさを軽やかに、時に衒学的に、余すことなく語り尽くす歴史的名著が、文庫初収録の連載回など増補のうえ完全版として甦る。



福永武彦

(フクナガタケヒコ )

1918年福岡県生まれ。東京帝国大学卒。48年に処女作「塔」を発表、54年に発表した『草の花』で作家としての評価を確立する。72年『死の島』が第4回日本文学大賞を受賞。61年に『ゴーギャンの世界』で第15回毎日出版文化賞を受賞している。代表作に『廃市』『幼年』『風のかたみ』がある。
ミステリへの造詣も深く、加田伶太郎という筆名で発表した推理小説は『加田伶太郎全集』という作品集に纏められている。〈エラリイ・クイーンズ・ミステリマガジン〉に連載していた読書エッセイ『深夜の散歩』(中村真一郎、丸谷才一と共著)のほか、訳書にA・E・W・メースン『矢の家』がある。79年没。


中村真一郎

(ナカムラシンイチロウ )

1918年東京府生まれ。東京帝国大学卒。日本語による定型押韻詩を試みる文学運動「マチネ・ポエティク」を加藤周一や福永武彦と推進する傍ら創作活動を始める。47年には初の著書となる長編小説『死の影の下に』を刊行。小説では〈四季〉四部作が著名で、78年『夏』が第14回谷崎潤一郎賞を、85年『冬』が第17回日本文学大賞を受賞。小説のみならず文芸評論や評伝も旺盛に執筆、とりわけ後期は近現代のみならず王朝文学や漢文学も含む浩瀚な評論活動を展開する。72年『頼山陽とその時代』が第22回芸術選奨文部科学大臣賞を、74年『この百年の小説 人生と文学と』が第28回毎日出版文化賞を、90年『蠣崎波響の生涯』は第27回藤村記念歴程賞ならびに第41回読売文学賞を受賞。
ミステリへの造詣も深く『冷たい天使』『黒い終点』などの小説のほか〈エラリイ・クイーンズ・ミステリマガジン〉に連載していた読書エッセイ『深夜の散歩』(福永武彦、丸谷才一と共著)がある。97年没。


丸谷才一

(マルヤサイイチ )

1925年山形県生まれ。東京大学大学院修士課程修了。大学ではジェイムズ・ジョイスを研究する。グレアム・グリーンなどの翻訳を手掛けるかたわら、60年に初の著書となる長編小説『エホバの顔を避けて』を刊行。67年『笹まくら』が第2回河出文化賞を、68年「年の残り」が第59回芥川賞を、72年『たった一人の反乱』が第8回谷崎潤一郎賞を、88年「樹影譚」が第15回川端康成文学賞を、2003年『輝く日の宮』が第31回泉鏡花文学賞を受賞。評論の領域での活躍も多く、1974年『後鳥羽院』が第25回読売文学賞を、85年『忠臣蔵とは何か』が第38回野間文芸賞を、99年『新々百人一首』が第26回大佛次郎賞を受賞。多岐に亘る文学的功績により2001年に第49回菊池寛賞を、04年に朝日賞を、11年には文化勲章を受ける。
文壇きっての推理小説愛好家で、エドガー・アラン・ポーの「モルグ街の殺人」を始めとする諸作やクリストファー・ランドン『日時計』の翻訳を手掛けているほか、晩年に至るまで推理小説の書評を寄稿。推理小説に関する文章を集成した著書には『快楽としてのミステリー』がある。12年没。