1920年代の英国領シンガポール。様々な勢力が入り乱れる街で顔役として名を馳せる青年・林田は、大物華僑の娘・呂白蘭殺害の容疑者として、警察と呂一族双方から追われる身となる。林田は執拗な追跡をかわしつつ、己を陥れた黒幕を捜す決意を固める。追う者と追われる者、各々が見出す驚愕の真相。鮮やかなどんでん返しが相次ぐ、ミステリの名手が趣向を凝らした逸品、初の文庫化。解説=日下三蔵
多島斗志之
(タジマトシユキ )1948年生まれ。早稲田大学卒。82年、多島健名義で執筆した「あなたは不屈のハンコ・ハンター」で第39回小説現代新人賞を受賞。85年『〈移情閣〉ゲーム』(別題『龍のプロトコル議定書』)で本格的にデビュー。89年に『密約幻書』、91年に『不思議島』がそれぞれ直木賞候補となる。『少年たちのおだやかな日々』『海賊モア船長の遍歴』『症例A』『離愁』『感傷コンパス』など著作多数。