海峡植民地で繰り広げられる逃亡劇
どんでん返しが立て続く、ミステリの逸品
『白楼夢――海峡植民地にて――』
多島斗志之

 1920年代、英国植民地シンガポール。大物華僑の娘、呂白蘭の死体を発見したことから、日本人青年・林田は殺人の嫌疑をかけられ、警察と呂一族の双方から追われることになる。
 身一つでこの地を訪れて一年半。日本人社会での諍いの仲裁に関わったことを切っ掛けに、今では街の顔役にのぼりつめ、華僑の権力闘争の調停までこなす存在となった。しかし、冷酷で高慢な富豪の娘、白蘭との出会いから、林田の運命は大きな転換を迎える。
 この一年半の間に起きた様々な出来事を思い返しながら、追っ手を振り払いつつ、白蘭殺人事件の真相を探す決意を固めた林田。しかし事態は、彼のみならず海峡植民地の命運を左右するまでに膨れあがり……。

 恋愛、歴史、謀略と、数々の趣向が凝らされたミステリが待望の文庫化。氏が得意とするどんでん返しも鮮やかな逸品、〈多島斗志之コレクション〉の既刊の三冊ともども、是非この機会にお楽しみ下さい。

■〈多島斗志之コレクション〉
『不思議島』
『二島縁起』
『海上タクシー〈ガル3号〉備忘録』
『白楼夢――海峡植民地にて――』

(2007年5月7日)