札幌でのシリーズ・コンサートの初回、ピアニストの安積界は、予定を変更し自らが封印したはずの曲目『ハンマークラヴィーア』を演奏する。娘の死をきっかけに、自ら封印したはずの『ハンマークラヴィーア』。その背景には、界の婚約者・東畑ミカリがロンドンで誘拐される事件が発生していた。脅迫状には、短い一文があるのみ――“『ハンマークラヴィーア』。完璧な演奏をしろ、さもなくば、ミカリは二度とお前の元には帰らない”と。解説=千街晶之
永井するみ
(ナガイスルミ )東京生まれ。東京芸術大学音楽学部中退。北海道大学農学部卒。1995年第2回創元推理短編賞に「瑠璃光寺」を応募し最終候補に(『推理短編六佳撰』所収)。96年「隣人」で第18回小説推理新人賞を受賞、同年『枯れ蔵』で第1回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞。