埼玉県警の何森稔(いずもり みのる)は、昔気質の一匹狼の刑事である。有能だが、組織に迎合しない態度を疎まれ、所轄署をたらいまわしにされていた。
久喜署に所属していた二〇〇七年のある日、何森は深夜に発生した殺人事件の捜査に加わる。障害のある娘と二人暮らしの母親が、二階の部屋で何者かに殺害された事件だ。二階へ上がれない娘は大きな物音を聞いて怖くなり、ケースワーカーを呼んで通報してもらったのだという。県内で多発している窃盗事件と同一犯だろうという捜査本部の方針に疑問を持った何森は、ひとり独自の捜査を始める──。
〈デフ・ヴォイス〉シリーズ随一の人気キャラクター・何森刑事が活躍する、三編収録の連作ミステリ。著者の新たな代表シリーズ開幕!
丸山正樹
(マルヤママサキ )1961年東京都生まれ。早稲田大学卒。シナリオライターとして活躍ののち、松本清張賞に投じた『デフ・ヴォイス』でデビュー。同作は書評サイト「読書メーター」で話題となり、シリーズ第2弾『龍の耳を君に』、第3弾『慟哭は聴こえない』、第4弾『わたしのいないテーブルで』、シリーズスピンオフ『刑事何森 孤高の相貌』『水まきジイサンと図書館の王女さま』も好評を博す。2021年『ワンダフル・ライフ』で読書メーター OF THE YEAR 2021に選ばれる。2022年『龍の耳を君に』が第17回酒飲み書店員大賞を受賞。他の著作に『漂う子』『ウェルカム・ホーム!』『キッズ・アー・オールライト』がある。