オールディスの書くSFは毎回テーマが違っていて、作品ごとに類似性がないのが驚きだった。それぞれ思いもよらぬ異世界の設定がなされ、その発想の広がりに唸っていたものだ。『グレイベアド――子供のいない惑星』や『地球の長い午後』など、発売と同時に読みあさったものだ。元々終末ものが好きだったが、『地球の長い午後』は想像を絶する地球の未来が描かれており、極彩色の気配を感じるその異世界の活写がいわゆる「めくらめく」ようだった。その一方で『グレイベアド』のように至るところ静かな気配に満ちた、重く沈んだ作品も堪能した。『地球の長い午後』が極彩色の70ミリの大型映画だとすると、『グレイベアド』はモノクロトーンのスタンダード映画のような味わいがあり、その話術の巧みさに驚いたものだ。
バラードが一貫して描いてきた終末ものテーマの連作も、前者とは違った気分でこれまたのめりこむように読んでいた。これでもか、これでもかと地球を痛めつけるバラードの小説は、与えられたifに地球がどう対応していくかという面白さもあってあちこち楽しめた。中でも『沈んだ世界』の単純ながら驚嘆すべき世界が好きだ。
クレメントもオールディス同様次々に異なった世界を描くSFワンダーランドの代表選手のような作家だが、僕は『20億の針』や『重力への挑戦』が好きだった。クレメントの作品は一つ一つ証拠物件を吟味しながら綿密に組み立てていく調査報告書のような重みと説得力があり、柔軟な発想と確実な筆との組み合わせの力を強く感じた。力業のSFという世界だろうか。
ホーガンの『星を継ぐもの』に端を発する異世界コンタクトものの連作の、重厚な力量にはいつも興奮させられた。スケールの大きな世界を描いているが、いわゆるハード宇宙SFの第一人者として、説得力のある物語世界をいつも僕の頭の中にこしらえてくれた。読みおえて随分たつが、改めて最初から読んでみたい作品だ。
ベストファイブというとどうしてもブラウンを外すわけにはいかない。短編の名手・ブラウンの紡ぎだす、いずれもが意表を突く異世界のショートストーリーはもう一つのSFの醍醐味である。小説が描きうる可能性とセンスの醍醐味を、僕はこの人から強く激しく刺激され続けてきた。
(1999/4/1)
|