2隻の宇宙船が南太平洋に墜落した。1隻に乗っていたのは捜査官、もう1隻に乗っていたのは犯罪者。両者とも人間ではない。高度な知性をもったゼリー状の生物であり、彼らは宿主なしには生きられない。捜査官は一人の少年の体内に宿り、犯罪者は別の人間にとりついている。だがいったい誰に? 容疑者は地球上の人間全員、20億人。様々な寄生生命SFの原点となった歴史的傑作。解説=牧眞司
ハル・クレメント
1922年、アメリカ合衆国マサチューセッツ州生まれ。幼少時より天文学とSFに親しみ、43年に天文学の学士号を、47年に教職修士号を、63年に理学修士号を取得。小説家としてのデビュー作はハーヴァード大在学中の42年、〈アスタウンディング〉誌に掲載された“Proof”。その後同誌で活躍をつづけ、50年に第一長編『20億の針』を発表した。続編に『一千億の針』がある。他の代表作に、『重力への挑戦』『アイス・ワールド』『窒素固定世界』など。99年、アメリカSF&ファンタジイ作家協会から生涯功労賞であるグランド・マスター賞を授与された。2003年没。
鍛治靖子
(カジヤスコ )東京女子大学文理学部心理学科卒。翻訳家。訳書に、クレメント『20億の針』、ニューマン『ドラキュラ紀元』、ビジョルド『スピリット・リング』、アシモフ『銀河帝国の興亡』他多数。