ある日突然、友人・魔作子を殺害し、それを天誅と言った正子。彼女は上流家庭に育ち、絵画の才能を伸ばすための留学を控え、充実した日々を送っていたはずだった。何が正子を凶行に駆り立てたのか? 精神分析医・吹原は対話と調査から、彼女の生活と心を攪乱した原因を探ろうと試みる。日常に潜む無意識の悪意が作る罠と、少女の心に眠る真相とは。「異常心理」他、全四編を収録。解説=宇田川拓也
佐々木丸美
(ササキマルミ )1949年北海道生まれ。75年『雪の断章』でデビュー。77年『崖の館』を発表。叙情と幻想を湛えた独自の作風で人気を博す。主な著作に『忘れな草』『花嫁人形』『水に描かれた館』『夢館』『罪灯』などがある。2005年逝去。