幼馴染の丈と忍び込んだ雪の邸で、三人の幼児を目撃した星玲子は、その時川に落ちた愛猫とらを救ってくれた優しい少年に思いを寄せる。父母を失い一人札幌に向かう道にも、彼は現われた。丈ととらに護られて成長する星玲子は、一途にかつての少年を思い続けるが、祖父の“遺産”を巡る策謀と、三人の幼児に繋がる縁が彼女を翻弄する。『雪の断章』『忘れな草』『花嫁人形』姉妹編。解説=千野帽子
佐々木丸美
(ササキマルミ )1949年北海道生まれ。75年『雪の断章』でデビュー。77年『崖の館』を発表。叙情と幻想を湛えた独自の作風で人気を博す。主な著作に『忘れな草』『花嫁人形』『水に描かれた館』『夢館』『罪灯』などがある。2005年逝去。