「飯田さん──いらっしゃいませんか? 警察のものなんですけど」相手が『飯田さん』と呼びかけたことに、志穂はぎくりとした。チェーンを掛けたままドアを開くと、相手の女は一枚の紙をドアの隙間から差し入れてきて……。二人の女のスリリングな心理闘争を描く「幻の男」など、サスペンスの名手が贈る七つの巧緻な逆転劇。記憶は、感覚は、秘かにあなたを裏切るかもしれない。解説=佐々木敦
北川歩実
(キタガワアユミ )1995年、『僕を殺した女』でデビュー。論理的な作風とサスペンスフルな展開で注目される。主な著書に『透明な一日』『猿の証言』『金のゆりかご』『運命の鎖』『天使の歌声』などがある。