配送された手首。地下鉄の網棚の上に置き去られた首。占い教室の床に横たわった胴体。これらはすべて同一人物のものと特定されたが、この死者は誰なのか。縺れ合う複数のアリバイ工作が解きほぐされた果てに、探偵砧順之介の前に姿を現した犯人とは??。孤高の本格推理作家が「私の書いた全作品中一番出来のいい作品」と自ら認めた幻の傑作長編を、ついに創元推理文庫に収める。編者解題=戸田和光/解説=芦辺拓
山沢晴雄
(ヤマザワハルオ )1924年大阪府生まれ。51年、《宝石》20万円懸賞短篇コンクールに投じた「砧最初の事件」「仮面」が《別冊宝石》に掲載される。翌年、「仮面」が佳作入選。53年には「銀智慧の輪」が第一席入選、54年には「死の黙劇」が佳作入選。2007年に初の著書『離れた家 山沢晴雄傑作集』(日下三蔵編)を刊行、08年版『このミステリーがすごい!』国内編第6位にランクインした。13年没。
戸田和光
(トダカズミツ )1960年東京都生まれ。埼玉大学卒。『ミステリーズ!』や『拳銃天使』『日影丈吉全集 別館』などの書誌情報提供をはじめ、多方面で活躍。〈山沢晴雄セレクション〉の『死の黙劇』『ダミー・プロット』の編纂にも関わる。鉄道ファン。