探偵小説誌〈新青年〉で六箇月連続短篇執筆の重責を担った大阪圭吉は、うらぶれた精神病院に出来した事件を描く「三狂人」を皮切りに、捕鯨船の砲手が生還した一夜の出来事から雄大な展開を見せる「動かぬ鯨群」、雪の聖夜に舞い下りた哀切な物語「寒の夜晴れ」など、代表作に数えられる作品を書き上げた。本書にはそのほか筆遣いも多彩な全十一篇を収める。戦前探偵文壇に得難い光芒を遺した早世の本格派、大阪圭吉のベストコレクション。著作リスト、初出時の挿絵附。解説=山前譲
「三狂人」
「銀座幽霊」
「寒の夜晴れ」
「燈台鬼」
「動かぬ鯨群」
「花束の虫」
「闖入者」
「白妖」
「大百貨注文者」
「人間燈台」
「幽霊妻」
大阪圭吉
(オオサカケイキチ )1912年愛知県生まれ。日本大学商業学校卒。32年「人喰い風呂」が大衆雑誌〈日の出〉創刊号の懸賞小説で佳作入選、同年に甲賀三郎の推薦で「デパートの絞刑吏」を〈新青年〉に発表する。〈新青年〉や〈ぷろふいる〉を中心に本格探偵小説を旺盛に執筆して、36年には初の作品集『死の快走船』を刊行。他の著書に『香水夫人』『人間燈台』などがある。43年に応召、45年にフィリピンのルソン島で没する。