若き日より『八丁堀の鷹』と謳われてきた北町奉行所定町廻り同心の戸田惣左衛門と、芝居好きの息子清之介。同心親子が、江戸から明治へと移り変わる時代の波に翻弄されながらも、数々の事件に真摯に立ち向かう。大老井伊直弼が暗殺された桜田門外の変を題材にした「逃げ水」、雪に閉ざされた旅籠での密室殺人事件の謎を解く「雪旅籠」など、滋味溢れる全八編。文庫オリジナル。
「埋(うず)み火」
「逃げ水」
「神隠し」
「島抜け」
「出養生」
「雪旅籠」
「天狗松」
「夕間暮」
戸田義長
(トダヨシナガ )1963年東京都生まれ。早稲田大学卒。2017年、第27回鮎川哲也賞に投じた『恋牡丹』が最終候補作となる。同回は、今村昌弘『屍人荘の殺人』が受賞作、一本木透『だから殺せなかった』が優秀賞となり、『恋牡丹』は第三席であった。『恋牡丹』を大幅に改稿し、2018年デビュー。同じ同心親子を描いたシリーズ第2弾『雪旅籠』も好評を博す。江戸文化歴史検定1級。