北町奉行所に勤める戸田惣左衛門は、『八丁堀の鷹』と称されるやり手の同心である。七夕の夜、吉原で用心棒を頼まれた惣左衞門の目前で、見世の主が刺殺された。衝立と惣左衞門の見張りによって密室状態だったのだが……「願い笹」。江戸から明治へと移りゆく混乱期を、惣左衛門とその息子・清之介の目を通して活写した。心地よい人情と謎解きで綴る全四編を収録。本書は第27回鮎川哲也賞最終候補として、受賞作の『屍人荘の殺人』、優秀賞の『だから殺せなかった』に次ぐ評価を受けた。文庫オリジナル。
「花狂い」
「願い笹」
「恋牡丹」
「雨上り」
戸田義長
(トダヨシナガ )1963年東京都生まれ。早稲田大学卒。2017年、第27回鮎川哲也賞に投じた『恋牡丹』が最終候補作となる。同回は、今村昌弘『屍人荘の殺人』が受賞作、一本木透『だから殺せなかった』が優秀賞となり、『恋牡丹』は第三席であった。『恋牡丹』を大幅に改稿し、2018年デビュー。同じ同心親子を描いたシリーズ第2弾『雪旅籠』も好評を博す。江戸文化歴史検定1級。