盆栽──。シングルマザーの知子は、純和風の美に今日もうっとりと見惚れている。三十の女性としては少々渋い趣味を満喫し、アイドルに夢中の娘と、お節介な父親の三人で、知子は騒がしくも平穏な日々を過ごしていた。しかし一家が住む町で電波系の怪文書が撒かれ女子高生の撲殺死体が発見された! のどかな地方都市を揺るがす大騒動の幕があがる。第一回本格ミステリ大賞受賞作。
倉知淳
(クラチジュン )1962年静岡県生まれ。日本大学芸術学部演劇学科卒業。93年、『競作 五十円玉二十枚の謎』への投稿を経て翌94年、『日曜の夜は出たくない』で本格的な作家デビューを飾る。以後、ユーモラスで親しみやすい作風ながら、ミステリとしての完成度にも妥協しない、高いクオリティの作品群を書き続けている。2001年、『壺中の天国』で第1回本格ミステリ大賞を受賞。他の著作に『過ぎ行く風はみどり色』『星降り山荘の殺人』『幻獣遁走曲 猫丸先輩のアルバイト探偵ノート』『ほうかご探偵隊』『片桐大三郎とXYZの悲劇』『皇帝と拳銃と』『世界の望む静謐』などがある。