- ミステリ
- 本格ミステリ
- 青春ミステリ
- サスペンス
- ハードボイルド
- ユーモア
- ユーモア・ハードボイルド
- 私立探偵小説
- 警察小説
- 時代ミステリ
- 歴史ミステリ
- 時代本格
- 連作短編集
- 短編集
- アンソロジー
- 倒叙推理
- パスティーシュ
- 心理ミステリ
- 鮎川哲也賞
- ミステリーズ!新人賞
- スリラー
- 奇妙な味
- ガイド
- 評論・研究
- エッセイ
- バラエティ
- 少年・少女探偵
- コミック
- ミステリーズ!
- クライム・コメディ
【第16回鮎川哲也賞受賞作】
解剖実習中、遺体の腹から摘出された一本のチューブ。その中には、研究室の教授を脅迫する不気味な四行詩が封じられていた。動揺する園部。彼を慕う助手の千紗都は調査を申し出るが、園部はそれを許さない。しかし、今度は千紗都自身が、標本室で第二の詩を発見してしまう。事務員の梶井に巻き込まれる形で調査を始めた千紗都は、チューブを埋め込んだ医師を突き止める。だが、予想外の事実が判明した……。解剖学教室を舞台にした傑作ミステリ。選評=笠井潔・島田荘司・山田正紀
■ 受賞の言葉
ここ数年、美術館や博物館を訪ね歩いていました。ミステリーを書きたいという気持ちはあるのに、パズルのピースがうまく填まらない。そんな焦りを感じて、手がかりになる「何か」を探していたのでした。
ある夏の午後、何気なく立ち寄った小さな博物館で、ようやくそれを見つけることができました。会場の片隅に展示された数理模型と医学模型。それらを見るうち、頭の中に散らばっていたピースが、きれいに組み上がっていくように思えました。ベンチに腰を下ろし、蝉の声を聞きながら、私は頭に浮かぶイメージを手帳に書き付けていました。
あのとき、ものの見方が変わったのだと思います。会場に並べられた品には必ず来歴がある。それらを長年保管し、展示しようとした人物もまた、過去にさまざまな逸話を持っている。そう考えるのはとても新鮮で、魅力的なことでした。目に見えない物語を掬い上げる作業が続き、やがてひとつの小説が出来上がりました。
この度、鮎川哲也先生の名を冠した賞をいただけたことを、本当に嬉しく思います。と同時に、うわついた気持ちでいてはいけないと、身の引き締まるような気分も感じています。
この作品を選んでくださった笠井潔先生、島田荘司先生、山田正紀先生には心より御礼を申し上げます。また、改稿にあたり島田先生、そして東京創元社の皆様には貴重なアドバイスをいただきました。本当にありがとうございました。
麻見和史
(アサミカズシ )1965年千葉県生まれ。立教大学文学部卒。2006年、『ヴェサリウスの柩』で第16回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。リーダビリティある筆致によって、医学部解剖学教室で展開される壮大な復讐劇を描き、注目を集める。他の著作に『真夜中のタランテラ』がある。