スパイとして国後島に潜入し、ソ連の警備隊に拘束された男。日本に帰還した彼を待っていた真実とは――(表題作)。東西冷戦下、謀略の最前線となった国境の海で繰り広げられる諜報戦に翻弄される者たちを、非情かつ詩情豊かに描いた作品群。そして荒涼たる原野から地の底の炭鉱まで、北の大地に生きる男たち女たちの事件簿。全集第3巻は昭和30年代前半に発表された13編を収録。著者あとがき=高城高/解説=権田萬治
「暗い海 深い霧」
「ノサップ灯台」
「微かなる弔鐘」
「ある長篇への伏線」
「雪原を突っ走れ」
「アイ・スクリーム」
「死体が消える」
「暗い蛇行」
「アリバイ時計」
「汚い波紋」
「海坊主作戦」
「追いつめられて」
「冷たい部屋」
高城高
(コウジョウコウ )1935年北海道函館市生まれ。東北大学文学部在学中の1955年、日本ハードボイルドの嚆矢とされる『宝石』懸賞入選作「X橋付近」でデビュー。大学卒業後は北海道新聞社に勤めながら執筆を続けたが、やがて沈黙。2006年『X橋付近 高城高ハードボイルド傑作選』で復活を遂げた。他の著書に『微かなる弔鐘』。08年、『墓標なき墓場』を第1巻とする〈高城高全集〉全4巻(創元推理文庫)が刊行された。