縫箔の職人・田毎は、自分の名前を騙る人物が温泉宿に宿泊し、デパートの館内放送で呼び出されていたのを知る。奇妙な出来事に首を捻っているうちに、元恋人の鶴子と再会したあるパーティのことを思い出す。商売人の鶴子とは住む世界が違ってしまったと考えていたが……。ふたりの再会が悲劇に繋がる「折鶴」など全4編を収録。ミステリの技巧を凝らした第16回泉鏡花文学賞受賞作。解説=末國善己
「忍火山(しのびやま)恋唄」
「駈落」
「角館(かくのだて)にて」
「折鶴」
泡坂妻夫
(アワサカツマオ )1933年東京生まれ。75年「DL2号機事件」が第1回幻影城新人賞佳作となりデビュー。78年『乱れからくり』で第31回日本推理作家協会賞、82年『喜劇悲奇劇』で第9回角川小説賞、88年『折鶴』で第16回泉鏡花文学賞、90年『蔭桔梗』で第103回直木賞を受賞。著書に『亜愛一郎の狼狽』『湖底のまつり』『煙の殺意』『妖女のねむり』『しあわせの書』『生者と死者』『夜光亭の一夜』等がある。奇術界でも著名で、69年に石田天海賞を受賞。2009年没。